漢字のもたらすイメージ

5月の下旬だか、6月の上旬だか忘れたけれど、幾つかの人名用漢字が追加されるというニュースがあった。

その人名用漢字の中に、「糞」、「屍」、「呪」などがあり、「これはいくら何でも人名にふさわしくない」といった国民の批判が起こっているという。
法務大臣の諮問機関、法制審議会人名用漢字部会(http://www.moj.go.jp/SHINGI/housei.html#gaiyo)が決めたらしいが、やはり僕自身もこれには首を傾げる。その人名用漢字部会のメンバーにジャーナリストの野中ともよ俳人黛まどかが含まれていることにも驚いた。しかも、お二人とも女性である。女性が例えば自分の可愛い子供に「屍」などという漢字を付け入れるだろうかと考えながらも、他のメンバーが男性でいかにもお堅くて偉い人たちだったので、その決まるまでの過程が何となく想像できる。
まあ、しかし国民がそのような漢字を使うかどうかだ。嫌なら使わなければいい、ただそれだけだ。逆に使いたい漢字を書いて役所に提出したら認可されなかったという話もよくある。今回、例えば「苺」という漢字などが追加されたそうであるが、今まではひらがなで使うか、あるいは断念せざるを得なかったのだろう。むしろ、こちらのほうが深刻だと思う。

話は変わるが、最近、民法の本を買って読んでいる。
民法は学生の頃一部かじったものであるが、その7〜8条に「禁治産者」という言葉が出てくる。初めてこの言葉を知ったときは、何やら毒々しいなぁと鳥肌が立つような、そんな感覚が体の中に走ったのを今でも覚えている。「禁治産者」とは「しばしば心神喪失の状態に陥る者」と記述されている。
ところが新しく買った民法の本にはそのような言葉はどこにもない。あれ?と思いながら、それは「成年被後見人」という言葉に変わっていた。5年くらい前に民法の改正があったことを知らなかったのだ。
成年被後見人」とは「成年で、後見される人」か。なるほど言い得て妙である。ソフトなイメージがあっていいと思う。

あと民法ではないが、「精神分裂病」という病名が、「統合失調症」に変わったりしている。

人名用漢字部会は、この民法の流れ、あるいは病名関連を見習ったらどうだろう。何故にマイナスイメージをもたらす漢字をわざわざ人名用漢字として案を出すのか理解に苦しむ。細かいことかもしれないが、そう言わずにはいられない。