松葉杖初心者 VOL.3

松葉杖生活もちょうど1ヶ月過ぎた。

と言っても、松葉杖を使用するものは買い物や病院に行くときぐらいなもので、毎日使用しているわけではない。

家が坂の上、ということもあって、外出しにくいということもあるが、やはり松葉杖で歩いていると、どうも駅や街の商店などに対しては遠慮が出てくる。

そういう空間は自分のために在るのではない、とはやや後ろ向きな言い方かもしれないが、それでもそこの諸々の店員や係りの人の手を借りてまで用を済ますほど、強靭な神経は持ち合わせていない。

大好きな書店や図書館に行くのも気が引ける。

第一、そこまで行き着くのに四苦八苦する。

駅の階段の上り下りで孤軍奮闘しているときに、必ずと言っていいほど、一人や二人が「手助け致しましょうか」と話しかけてきてくださる。
それが傍目に魅力的な女子学生であったこともあった。
思わず心臓がドキンとくる。

「いや、結構です。大丈夫ですから」と相手が見知らぬ人であれば、誰であろうとお断りしていることにしているのであるが、さすがにこのときは天にも昇る嬉しい気分になった。

はあっ。それにしても神経を使うものだ。

と同時に、こうして声をかけてきてくださる人が多いことに、日本もまだ捨てたもんじゃないな、と改めて思う。

逆の立場に立って、自分がこのような場面に出くわしたら、やはり声をかけるだろう。
助けてあげたいと思う。

でも、怪我人である自分は遠慮する。
なんでだろう。
怪我の程度からくるのだろうか、ということは想像できる。
これくらいの怪我であれば、この階段くらいは大丈夫だろうみたいな。

無論、本当に助けが必要なときは助けを求める。

これっておかしいのだろうか?

ところで、街を松葉杖で歩いている人って見かけない。
街、いや日本という国(?)の空間そのものが松葉杖使用者のためにあるのではない、ということは頭で理解はしているのだが・・。

要は怪我人になったときの個人の意識の改革と、街全体の設備面からの再建がポイントということなのだろうか。(大げさ?)